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「真景累ヶ淵」登場人物とあらすじ(その12) [落語]

12.三蔵殺し 

登場人物:

深見新吉(深見新左衛門の次男)

お賤(元・惣右衛門の妾で新吉の女房)

作蔵(馬方)

安田一角(横曾根村の剣術家)

婆(茶店の女) 

三蔵(お累の兄で羽生村の質屋・羽生屋の主、三右衛門の息子)

与助(羽生屋の奉公人)

あらすじ:時は享和2年7月21日。下総の松戸の傍にある戸ヶ崎村の茶店で馬方と武士の会話が聞こえる。どこかで聞き覚えのある声だ。

馬方「お客さん、あんたどちらへおいででございやすねえ、・・・」

武士「馬は欲しくないよ」 

馬方「・・・や、あんたア安田さまじゃありませんか」

武士は笠を深くかぶっていて顔を隠していたので判らなかったが安田一角であった。そして、馬方は作蔵であった。

作蔵「安田一角先生とは気が付かなかったよ」

安田一角「大きな声をするな、・・・己の名をいってくれるな」

作蔵は森蔵親分という博打打ちの宅に世話になっていたが、金を盗んでしまい追い出され、以来、馬小屋のようなところに住み、博打も打てず、馬方として日々の僅かな飲み代を稼ぐ生活をしているのだという。

安田一角「汝(てめえ)馬を引いているのが幸いだ、己は木卸(きおろし)へ上がる五助街道の間道に、藤ヶ谷という処の明神山に隠れている。」

作蔵「へー、・・・あすこは生(なま)街道てえので、・・・何だってあんな処にいるんだえ」

安田一角「それには少し訳があるのだ、己も横曽根にいられんで当地へ出たのだ、・・・武士の果は外に致方もなく、どうせ永い浮世に短い命、斬り取り強盗は武士の習だ、今じゃア14、5人も手下ができて、生街道に隠れて追剥をしているのだ」

安田一角が自分の居所を作蔵に明かしたのには訳があった。馬方なら、金を持っていそうな上客に出くわすことも多いだろうから、そういう客をみつけたらできるだけ駄賃を廉くいって馬にのせ、近道だとかなんとかいって生街道の明神山まで連れてこいという。儲けの二割を礼にやるからという。

作蔵「うめえな、只馬を引っ張って百五十文ばかりの駄賃を取って、酒が二合に鰊の二本も喰えば後に銭が残らねえような事をするよりいいが、同類になって、もし知れた時は首を打斬られるのかよ」

安田一角「そうよ」

一角は懐から5両を取り出し作蔵に渡しながら、

安田一角「これは汝が同類になった証拠のため、少しだが小遣銭に遣るから取っておけ」

作蔵「え、有難え、・・・今日は本当に思え掛けねえで5両2分になった」

安田一角「なぜ」

作蔵「今日はね、あのもさの三蔵に逢ったよ、羽生村の質屋で金貸した婆ア様が死んだって、その白骨を高野へ納めるてえ来たが、今日は廿一日だから新高野山へお参りをするてえので、与助を供につれて、己が先刻東福寺まで送ってッたが、昔馴染みだから二分くれるッていったが、有難うござえやす、実に今日は思え掛けねえ金儲けが出来た」

必ず藤ヶ谷へ上客を引っ張ってくるようにと言いつけて安田一角は去っていった。そこへ、

男「おい作」

作蔵「え、誰だえ己を呼ばるのア誰だ」

作蔵はあたりを見回し、振り返ってみると、二枚折の葭(よし)の屏風の陰に、蛇形の単物に紺献上の帯を神田に結び、結城平の半合羽を着、傍の方に振分の小包を置き、年頃30ばかりの男で、色はくっきりと白く眼のぱっちりとした、鼻筋の通った、口元の締まった美男が女房と一緒にいた。

男「汝(てめえ)、大きな声でどなっていたが相変わらずだなア」

女「おや作蔵さんお前の噂は時々していたが、相変わらずいい機嫌だね」

声の主は新吉とお賤であった。安田一角と作蔵のやり取りはすべて筒抜けで、自分たちにも半口載せろという。三蔵も帰り道に此処を通るのだろうから、連れてきて、ここで用事ができたといって馬を置っ放して逃げてしまってくれという。三蔵から100両でも200両でも無心してみて、だめだったらお供の与助ともども殴っ殺して川へ放り込んでしまうつもりだという。三蔵を連れてくる前金として30両をやるといわれ、「金運が向いてきた」と喜んで作蔵は新高野へ三蔵を迎えにいった。

日もどっぷりと暮れ、川端の葦の繁みに新吉とお賤は身を隠して待っていると、向こうから三蔵が作蔵の馬に乗ってやってきた。

作蔵「与助さんあんたもう何歳(いくつ)になるねえ、・・・」

与助「もう60に近くなったからめっきり年を取ってしまった」

作蔵「羽生村の旦那ちょっくら下りておくんなせえ・・・、実はこの先へいって炭俵を6俵積んできてくれと頼まれているんだが・・・」

三蔵「汝が困るなら下りて歩いていこう」

三蔵が馬から下りると作蔵は大急ぎで横道の林の陰へ馬を引き込んだ。そこへ草の繁みからごそごそと出てきた新吉は、ものをもいわず突然(いきなり)与助の腰を突いたので、与助はもんどりを打って利根の枝川へどぶんと投げ込まれた。アッと三蔵が驚いている後から、新吉が胴金を引き抜いて三蔵の脇腹へ突っ込んでいった。三蔵が倒れるところへ乗りかかり、胸先を抉ったが、三蔵も死に物狂いで起き上がり、新吉のたぶさを取って引き倒す。そこへ与助が川中から這い上がってきて、短いのを引き抜き、

与作「この野郎なにをしやアがる」

と斬ってかかる様子を見るよりお賤は驚き、新吉に怪我をさせまいと、そっと後から出て与助のたぶさを取って後の方へ引き倒すと、与助は石だか土だか何かの塊を取ってお賤の顔に打ちつけた。お賤は顔から火が出たように思い「アッ」といって倒れると、乗し掛かり斬ろうとするところへ、作蔵が飛び出してきて与助を蹴り上げたから、与助はウンといって倒れた。新吉は刀を取り直してまた一刀三蔵の脇腹をこじったので、三蔵もついに息が絶えた。新吉は手早く三蔵の懐へ手を入れ、胴巻の金を抜き取って死骸を川の中へ投げ込んだ。

作蔵「兄い無心どころじゃねえ突然(いきなり)行(や)ったんだな」

新吉「汝はもう帰(けえ)ったのかと思った、・・・誰か人は来やアしねえか・・・」

作蔵「大丈夫だ、・・・割合を貰(もれ)えてえなア」

新吉「金なんぞもっていやアしねえ・・・」

作蔵「冗談じゃアねえぜ、・・・」

作蔵は少し怒気を含み、ダミ声を張り上げ、「手前の懐を改めてみよう、己だって手伝って・・・罪を造っているんだ・・・出せってばやい」

新吉「遣るよ、遣るから待て・・・」

新吉は隙をねらってどんと作蔵の腰を突くと、作蔵はどぶりと用水へ落ち、がばがばとすぐに上がってきたところをずーんと脳を割付けた。

作蔵「斬りやがったなアこの野郎」

作蔵の声がりーんと川に響き、また這い上がってくるところを無闇に斬りつけた。作蔵はこれまでの悪事の報いにやついに息が止まったとみえ、そのまま土手の草をつかんだなり川へのめり込んでしまった。

新吉「もう此処にぐずぐずしてはいられねえ」

お賤「私はどうも殴たれた処が痛くって堪らないよ」

お賤の顔は半面紫色に黒みがかり、腫れ上がっていた。

以下、その13へ続く・・・。


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