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「真景累ヶ淵」登場人物とあらすじ(その8) [落語]

8.聖天山

登場人物:

深見新吉(深見新左衛門の次男)

お賤(惣右衛門の妾)

惣右衛門(羽生村の名主)

その内儀

惣次郎(惣右衛門の長男)

惣吉(惣右衛門の次男)

土手下の甚蔵(羽生村のバクチ打ち)

あらすじ:

お累の死後、新吉はすっかり憎まれ者となり村八分状態に。行く当てはお賤のところしかなかった。お賤のところでは体調がすぐれない惣右衛門が眠っていた。もう2~3日もこの状態でお賤が看病をしているのだという。そして、惣右衛門が亡くなった時の遺言状まで書かせてあるのだという。内容はというと、「・・・お賤は無理無体に身請けをして連れてきた者であるから、私が死ねば皆に憎まれてこの土地にいられまいから、元々の通り江戸へ帰してやってくれ、帰る時は必ず金を50両付けて帰してくれ、形見分はお賤にこれこれ、新吉は折々見舞いに来る親切な男なれども、お賤と仲がよいから、村方の者は密通でもしているように思うが、あれは江戸からの親(ちか)しい男で、さような訳はない、親切者で有ることは見抜いているから、・・・湯灌は新吉一人に申し付ける、外の者は親類でも手を付けることは相成らぬ」という妙なもの。そしてお賤の口からは恐ろしい言葉が・・・。

お賤「うちの旦那を殺しておくれな」

しかし、惣右衛門には可愛がってもらった恩のある新吉は「出来ない」と断る。押し問答の末、こうなるとご婦人の方が度胸が据わっているのか、お賤は新吉の手を引いて惣右衛門の病間へ。「旦那、旦那」とお賤が呼んでも惣右衛門は病気疲れで深い眠りについているようだった。お賤はそっと、襟の間に細引を挟み絞殺の準備。一方を新吉に渡し、お賤の目配せで新吉は力に任せてこれを引っ張った。惣右衛門は仰向けに寝たなり虚空を掴んで「ウーン」とうなった。お賤は有り合わせた小杉紙を台所で濡らしてきて、これをピッタリと惣右衛門の顔へあてがった。ブルブル震えている新吉。お賤が濡紙を取ると、完全に息が絶えた様子。咽喉のところに細引の跡が2本ついていたのを、お賤は掌に水をつけてもみ消した。これで大丈夫。新吉にはいったん家へ帰らせ、お賤は本家へ駆け込むことに。

お賤「旦那様がむずかしくなりましたからお出でなすって、まだ息はありますがご様子が変わったから」

驚いた本家からは長男の惣次郎、次男の惣吉、惣右衛門のお内儀、それに村の年寄りたちが駆けつけたが間に合わない(間に合わない訳で、殺した奴が知らしたのだから・・・)。遺言の通り内葬がとりおこなわれ、湯灌は新吉が行うことになった。ところが慣れていないと湯灌というものは一人では大変なもので、新吉は自分が殺したと思うとおどおどして手がつけられない。そこへ現れたのが土手下の甚蔵。

甚蔵「・・・誠にお愁傷でのう、惜しい旦那を殺した、ええこの位物の解ったあんな名主は近村にねえ善い人だが、新吉手前(てめえ)仕合せだなあ、一人で湯灌を言い付けられて、形見分もたんまりと・・・」

新吉「かえって有り難迷惑で一人で困ってるのだ」

ここは兄弟分のよしみ。内緒で甚蔵が手伝うことに。甚蔵は随分と手慣れており、手際よく湯灌をこなしていく。ところが、仏様の鼻からタラタラと鼻血が流れ出た。身寄りか親類が来ると血が出るというが、自分は違うのにおかしい。そう思った甚蔵が仏様の首筋をみると、判然と黒ずんだ紫色に細引の痕を2本見つけた。

甚蔵「やい、こりゃア旦那は病気で死んだのじゃアねえ変死だ、咽喉頸に筋があり、鼻血が出れば何奴(どいつ)か縊(くび)り殺した奴があるに違えねえ」

敵(かたき)を捜して旦那の恩返しをしよう、ちょうど本堂には若旦那の惣次郎がいるから呼んでこようという。あわてふためく新吉に、

甚蔵「それとも新吉、実は兄い私(わっち)が殺したんだと一言いやア黙って埋めてやろう」

新吉「何を詰まらねえことを・・・」

甚蔵「手前が殺したんでなけりゃア外に敵が有るのだから敵討ちをしようじゃアねえか、手前お賤ととうから深え仲で逢引するなア種が上がっているが、手前は度胸がなくってもあの女(あま)ア度胸がいいから殺してくれエといい兼ねねえ・・・」

追いつめられた新吉は全てを白状。惣右衛門はそのまま埋葬された。

七日が過ぎると甚蔵がお賤のところにやってきた。博打に負けたとみえて素裸で、寒いのでふんどしの上に馬の腹掛けを引っ掛けてという姿だった。

甚蔵「ヘエ、御免なせえ、へエ今日は」

お賤「おや、新吉さん土手の甚蔵さんが来たよ」

新吉は慄(ぞ)っとして、眼をパチクリさせて火鉢の側で小さくなっていると、甚蔵はお賤に金の無心に来たらしい。惣右衛門の旦那が亡くなり、ほとほと困っており、堅気になりたいのだという。お賤が少しばかりと渡した金子は二朱金が2つ。ところが30両ないと足りないと甚蔵が言う。お賤は怒って、

お賤「女と思って馬鹿にしておくれでないよ。・・・碌にお目にかかったこともありません・・・30両お金を貸す縁がないでは有りませんか。・・・お前さんに弱い尻尾を見られていれば仕方ないが、私の家で情交(いろ)の仲宿をしたとか博打の堂敷でもしたなら、怖いから貸すことも有るが、・・・帰っておくれ・・・」

甚蔵「新吉黙って引っ込んでいるなえ此処へ出ろ、借りてくれ、ヤイ」

新吉「今に持って行くから、ギャアギャア騒がねえで、実は、己がまだお賤に喋らねえからだよ、当人が知らねえのだからよ」

甚蔵が凄みを利かせて怒り出したので、新吉は金はあとで持っていくからということでとりあえず甚蔵を家に帰し、事情をお賤に説明した。今回の計画殺人は随分前から段取りを進めてきたのに、台無しになってしまったと残念がるお賤。しかし、今、30両を渡したところでこれからもずっと甚蔵には強請られ続けるだろう。

お賤「どの道新吉さん仕方がない、土手の甚蔵をどうかして殺しておしまいよう」

お賤の算段で、惣右衛門の形見分けの金は聖天山(しょうでんやま)の左の手水鉢の側に200両が埋めてあることにし、そこへ甚蔵を誘い出し、始末することに。

新吉「此処だ此処だ」

甚蔵「よしよし」

といいながら新吉と甚蔵がポカポカ掘るが金は出てこない。もとより無い金、びっしょり汗をかいて、

甚蔵「こん畜生咽喉が渇いて仕様がねえ」

新吉「手水鉢は空で柄杓はからからで、誰もお参りに来ないと見えるな、うんそうそう、こっちへ来な、聖天山の裏手で崖の中段にちょろちょろ煙管の羅宇から出るような清水が貯まって、月が映っている、兄いあすこの水は旨えな」

甚蔵「旨えが怖くって下りられねえ」

そこには藤蔓に蔦や何かがからまって縄のようになっており、それにぶらさがって行けば下りられると新吉が言うと、

甚蔵「こいつア旨え事を考えやがった、新吉の知慧じゃアねえようだ」と柄杓を口にくわえて甚蔵は崖を下りていった。「アア旨え旨え甘露だ、いい水だ」

新吉「俺にも一杯持ってきて来んねえ」

甚蔵「忌々しい奴だな、待ちヤア」

蔦にすがり、ゆっくり戻って登ってくるところを、足掛かりのないところをねらい澄まして新吉は腰に帯したる小刀を引き抜き、力一杯にプツリと蔦を切ると、甚蔵は真っ逆さまに落ちていった。とても助かりようはないが、お賤に言われたとおり、新吉は側にある石をごろごろ谷間へ転がし落としてとどめを刺した。新吉は急いでお賤のもとへ戻り、万事筋書き通りにうまくいったことを伝えた。

新吉「手前の知慧じゃないようだと言われた時、胸がどきりとしたが、・・・頭を打破ったに違えねえが、彼奴は悪党の罰だ」

己が悪党の癖に。これから二人で仲良く酒盛りをしているうちに空は段々雲が出てきて薄暗くなり、もう寝ようということになり、戸締まりにかかろうとしたところ、外の生垣のあたりからバリバリバリという音。何だろうと怖々と庭を見ると、頭髪は乱れて肩に掛り、頭蓋は打裂けて面部(これ)から肩(これ)へ血だらけになり、素肌に馬の腹掛けを巻き付けた形で、何処をどう助かったか土手の甚蔵が庭に出てきた時には驚いたのなんの。

甚蔵「己(うぬ)、いけッ太え奴、能くもあの谷へ突き落としやアがったな、お賤も助けちゃおかねえ、能くも己を騙しやアがったな」

新吉「後生だから助けて、兄い苦しい・・・」

甚蔵「なに痛えと、ふざけやアがるな」

甚蔵は腰から出刃包丁を取り出し、新吉の胸元めがけて突こうとしたところ、どこから飛んできたかズドンと一発鉄砲の流れ弾が甚蔵の胸元へ命中した。甚蔵は口から血反吐を吐きながらドンと前へ倒れた。

お賤「新吉さんお前に怪我はなかったかえ」

鉄砲を抱えたお賤の姿が・・・。偶然にも惣右衛門に鉄砲の手ほどきを受け、引き金に指を当てることだけは教わっていたのだという。

お賤「形見分けのお金もあるのだけれど四十九日まで待ってはいられないから、少しは私の貯えもあるから、それを持ってすぐに逃げようじゃないか」

新吉とお賤は逐電。甚蔵の死骸は絹川べりにあったが、普段から嫌われ者のため、「アアこれからは安心だ」ということで、誰一人、犯人を詮索する者はいなかった。姿を消した新吉とお賤についても、どうせ駆け落ちをしたのだろうということで何事もなかったことのように・・・。

以下、その9へつづく・・・。


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