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マーラーの聴き方 [クラシック音楽]

世の中には「どうもマーラーが苦手だ」というクラシックファンが少なからず存在するように思う。私が愛読している某ブログ主様も、自称「マーラー音痴」として、マーラーのどこがつまらないのかといったことが紹介されていて、なるほどと感じることも多い。

好きな作曲家を3人挙げよといわれたら、迷わずマーラー、ショスタコーヴィチ、プロコフィエフと答える私でも、最初からマーラーが好きになったというわけではない。まあ、単なるクラシック好きのオッサン流のマーラーの聴き方講座に付き合っていただこう。マーラーの交響曲ほど聴いていて楽しい曲はあまりないと思うのだが・・・。

さて、どうして、マーラーが苦手と感じるのだろうか?私が敬愛する上記の某ブログ主さんによる「マーラー評」を私なりに整理すると、次のようなことになる。 

1.全体的に曲が長い。否、長すぎる。

2.オーケストラがバカでかいだけで、大げさである。

3.メロディー・メーカーではない。

4.つかみどころがない。

以上、4点を挙げてみたが、まあ、こんなところだろうか?1つずつみていこう。全体的に当たっているところもあるが、誤解されている点も多いように感じる。 

まず、「1」の曲が長いというのは、全くその通りだと思う。最も長い交響曲3番は約90分の大作で全部で6楽章から構成されているが、マーラー自身はさらに7楽章目(これは交響曲4番の第4楽章に移されたとのこと)を構想していたという話があるほど、あきれる長さといえる。また、同じ交響曲3番でいえば、その第1楽章だけで約30分かかるというから常識はずれの長さだ。こういう長い曲というのは、ビギナーの方(特に、子供)とか、クラシックファンであってもマーラーをはじめて聴くというような方には、聴いていてとてもツライ音楽であることは想像に難くない。ただ、私がマラ3を好きになっていった経緯を振り返ると、何度も繰り返し聴いていくうちに、少しずつ耳に慣れていったように思う。そして、なぜ、何度も聴いてみようという気になったかというと、所々に、お気に入りの部分を見つけていくことができたからだったと思う。この辺は後の説明の部分に関係そうなところなので、ここでは省略しておく。

「2」のオーケストラが「バカでかい」というのは全く異論がないところだ。だが、「大げさ」というのは私は適当な言葉ではないと強く感じるところだ。例えば、マーラーとブルックナーの交響曲を比較してみたときに、私はブルックナーの方が「大げさ」なオーケストレーションであると感じる。これって反論になってませんネ。皆さんご存じの通り、マーラーは偉大な指揮者だった。作曲家としてのマーラーよりも、指揮者としてのマーラーの方が高く評価されているほどだという。この指揮者としての経験が、マーラーのオーケストレーションに十二分に反映されているように私には思えてならない。例えば、マーラーはベートーベンを大変尊敬していたが、そのオーケストレーションについては、欠点を熟知していたのではないだろうか。ベートーベンとマーラーの時代では、楽器の種類も違えば、演奏技術にも違いがあっただろうから、先人のオーケストレーションに欠点があるのは仕方のないところだ。そういう指揮者としての経験から、マーラーは自身の交響曲では、先人がなし得なかった、オーケストレーションを追求したのではないだろうか。マーラーはとにかく色々な楽器を使い、その使い方が際だって上手い作曲家だと思う。これは、指揮者として培われた楽器への愛情の表れではないかと私は思うのだ。

「3」のメロディー・メーカーでないという意見はどうなんだろうか?たしかに、マーラーはオリジナルのメロディー以外に、民謡とかいわゆる俗謡、童謡の類のメロディーを極めて多数引用させている。日本におきかえれば、例えば北島三郎や都はるみといった演歌歌手の歌のメロディーが交響曲の中に突然出てくるような、そういう引用の仕方をしているように感じる。恐らく、そういうところが、芸術作品としての評価を下げている要因となっているようにも感じられる。しかし、私はそこにマーラーの凄さを感じる。すなわち、どんなメロディーでも、秀逸なオーケストレーション技術によって、料理してしまうのがマーラーなのだと。なので、聴いていると、俗っぽくて親しみが沸くメロディーが多いと思う。踊りのメロディーや行進曲も頻繁に登場するので、慣れてくると、楽しくて仕方がなくなるという感じになってくると思う。マーラーの作品は、相対的にオリジナルなメロディーが少ないということは言えるかとも思うが、私はけっしてマーラーがメロディー・メーカーでないとは思わない。

さいごに、「4」の「つかみどころがない」という点。これが一番の要因になっているのではないかと私は感じる。私が東京勤務時代に一緒によくコンサートへ通ったK先輩がマーラーをとても苦手にしていた。面白いのはこのK先輩はショスタコーヴィッチは聴けるのにマーラーがダメなのである(両方ダメというのならわかるのだが・・)。私見では、マーラーとショスタコーヴィチの交響曲の大きな違いはただ1つ、マーラーが「対位法」を多用する点であろうと思う。そして、K先輩はこの「対位法」が苦手なのではないかと思うのだ。「対位法」とは、私の理解では、2つのメロディーを同時に奏でること。異なったメロディーが重なると、とても面白いハーモニーが生まれる。そこが、「対位法」の見せ所で、マーラーはスキあらば「対位法」というくらいこれを多用する。ところが、1つのメロディーを追いかけながら聴くタイプの人の場合は、「対位法」になると、メロディーが聴き取りにくくなってしまい、まさに「つかみどころがない」状況に陥るのではないだろうか?この点を克服する方法はとても簡単で、くり返し聴き込むことだ。そうすれば、「対位法」のところで、2つのメロディーが同時に聴こえてくるようになる。そうなればマーラーの作曲技法の意味がよく分かり、楽しいと感じられるようになると思う。

最後に、「マーラー音痴」に悩む方への私からのメッセージ。マーラーが苦手な方は、いきなりコンサートへ行ってはなりません。そこはモーレツに長い地獄の時間が待っています。必ず、CDなどで聴き込んで予習をしてから行きましょう。マーラーの交響曲はベートーベンなど他の作曲家の交響曲とはわけが違います。何度も聴き込むことで、複雑な構成が理解できるようになっていきます。ただし、この聴き込むという作業は案外楽しいです。それは、とても親しみやすいメロディーが、秀逸なオーケストレーションで奏でられるからです。

あと、これも付け加えておくと、マーラーの交響曲は演奏家の上手い下手が如実に表れるという恐ろしさがあります。なので、できるだけ上手い演奏で聴くことをオススメします。ただ、ではどの演奏が良いかというのはむずかしい問題です。マーラーの楽しさが伝わってくる演奏として、アバド指揮のルツェルン祝祭管弦楽団のDVDはオススメできると思います。この楽団の演奏は毎年BS放送で観るのですが、毎回、神業だと感じる凄い演奏です。


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ヒロノミンV

 ご無沙汰しています。先日の台風は大丈夫だったでしょうか?

 僕は、マーラーよりもブルックナーの方が苦手だったんですが、それでも7番「夜の歌」は今でも苦手ですね。メータ&イスラエル・フィルで聴いたときは、第2・4楽章が『へええ、こんなにかわいらしい曲なのか』と思った覚えがあります。
 4の対位法は、なるほど、と思いました。ショスタコーヴィチはユニゾンを多用する人で対照的ですよね。

 マーラーの交響曲は、いつかは3番を生演奏で聴きたいと思ってるんですが、岡山ではなかなか難しいですね。。。
by ヒロノミンV (2011-09-10 18:32) 

てがた

ヒロノミンさん、ご無沙汰しております。
台風はとてもこわかったですが、大丈夫でした。
この1年というものコンサートへ行っておらず、ブログ更新もままならぬ状態が続いております。しかし、今月の津山国際音楽祭は行く予定にしています。ヒロノミンさんオススメの大フィル、とても期待しています。

マラ7は、天神町のCDショップ「アルテゾーロ・クラシカ」のご主人が、よく、DVDを流しています。アバド指揮、ルツェルン祝祭管弦楽団の演奏です。ご主人は、マラ7はマーラーの中で一番苦手な曲だったそうなのですが、何回も聴いているうちに、今では一番好きな曲になってしまったそうです。

マラ3は津山国際音楽祭でコバケンさん指揮の京都市響で聴いています。会場が津山文化センターでは狭いため、津山総合体育館でやったのを覚えています。

マーラーが苦手という人は本当に気の毒だと思います。ヒロノミンさんはブルックナーが苦手だったんですか。実は、私はR.シュトラウスが苦手です。誰にでも苦手はあるということですかねw
by てがた (2011-09-10 19:29) 

てがた

訂正です。マラ3の演奏は京都市響ではなく、日フィルでした。
by てがた (2011-09-10 21:50) 

クリストフ

始めまして。若い頃からクラシックの大ファンなのですが、今に至るまでマーラーはどうも苦手な作曲家です。でも、この2〜3日再挑戦しているところです。どう聴けば良いのだろうと、ネットをサーチしてこのサイトを見つけました。
 ブログを拝見して面白いなと感じたのは、ショスタコーヴィチとマーラーの比較でした。実は、私も若い頃からショスタコは大好きでした。「ショスタコーヴィチの証言」が出版される前、今とは違い、ショスタコを聴いていると変わり者扱いされた時代から大ファンでした。
 一方で、私は対位法が大好きです。バッハで最も好きな曲は「フーガの技法」です。バッハ以外にも、モーツァルトやフンメル、メンデルスゾーンなどの対位法を駆使した作品には聞き惚れてしまうことしばしばです。マーラーも対位法を多用しているのは知りませんでした。自分にとって、あるいはこれがマーラーへの突破口になるかもしれないなと思いました。
 そんな風に、私の場合、対位法がマーラーへの障壁となっているわけではありません。では、何故、マーラーが苦手なのか。正直、よく分からないでいます。ブルックナーといえば、大好きというわけではないですが、マーラーほどの違和感は感じません。あの怒濤のような音の流れには心地よさすら感じます。
 でも、この2〜3日、デスクワークをしながらマーラーを聴いていて、作曲家には失礼かもしれませんが、あまり生真面目になって傾聴するのではなく、BGMとして延々と続く音の流れに自然に身を任せるのが、自分には合った聴き方なのかな、とも感じています。
by クリストフ (2015-08-15 22:02) 

てがた

クリストフ様、書き込みありがとうございました。

最近はすっかり更新をサボってしまっているのですが、マーラーについては、私と同じような感じ方をされている方がほとんどいらっしゃらないようだったため、意識的に挑発的な内容にしています。面白いと感じていただけたなら大変光栄ですw

マーラーへ再挑戦とのこと。本来、趣味として考えるなら、自身が「楽しい」とか「面白い」と感じるから聴くわけで、苦手なものに挑戦するというのは如何なものかとも感じます。でも、この作曲家の作品は、よほどの専門家でないかぎり(否、専門家であっても?)、少し聴いたというくらいでその面白さを理解するのはむずかしいのだと思います。その大きな要因の1つは曲が長いということであり、これが数多くの「食わず嫌い」を生み出している可能性があるのではないでしょうか。

ショスタコ歴も長いようですね。ショスタコ先生はマーラーを大変尊敬していたと感じます。バーンスタインの解説で、タコ9の短い第4楽章の一節がマラ9のメロディになっているとの説を最近知りました。

マーラーにはまだまだ奥深い魅力があると感じますし、何度聴いても新たな発見があります。ぜひ、クリストフ様にとっての「面白い」魅力を見つけ出してください。

by てがた (2015-08-23 17:57) 

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